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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《仇討三態(あだうちさんたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,136 字 · 33 頁
が、そうした流言は、誰がいいふらすともなく、風のごとく兄弟の身辺を包んで流れるのであった。
兄弟にとっていちばん悲しいことは、そうした世の疑いを解くべき機会が、永久に来ないことだった。
年が明けると安政四年であった。兄弟にまつわる悪評も、やっぱり年を越えていた。が、安政四年の秋となり、冬となると、さすがに、兄弟のことを取り立てていう者もなくなった。短気な忠次郎も、腹を立てる日が、少なくなっていた。
が、兄弟が食うべき韮は、まだ尽きてはいなかった。
それは安政四年も押し詰まった十二月十日、同藩士の久米幸太郎兄弟が、父の仇、滝沢休右衛門を討って、故郷へ晴がましい錦を飾ったことである。
それが、なんという辛抱強い敵討であったろう。兄弟の父の弥五兵衛が、同藩士中六左衛門の家で、囲碁の助言から滝沢休右衛門に打たれたのが、文化十四年十二月、長男幸太郎が七歳、次男盛次郎が五歳のときであった。兄弟が伯父板倉留二郎の手に人と成って、伯父甥三人、永の暇を願って、敵討の旅に出たのが、文政十一年、兄幸太郎が十七歳、弟盛次郎が十五歳の秋だった。伯父の留二郎は、四十二歳であった。