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こんにちのぶんがくのてんぼう
今日の文学の展望
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁
を失わせる結果となり、従って、プロレタリア文学運動の高揚と退潮とに至る多岐な数年間の経験から、将来の作家的成長のために学びとるべき貴重な多くのものを、却って一種の自嘲、軽蔑をもってやりすごした憾みがあったのである。
昭和七年(一九三二年)の春以来、執筆の自由を失っていた何人かの作家たちがこのころ追々過去の生活を題材として作品を発表しはじめた。村山知義氏の「白夜」その他代表的な作品があった。転向文学という独特な通称がおこったほど、当時は過去を描いた作品がプロレタリア作家によって発表されたのであったが、その一貫した特徴は、文化運動を通じての活動によって法律の制裁をも受けた当事者たちの箇人的な意味での自己曝露であり、良心の苦悩の告白であった。俺の本性はざっとこのようなものだ。実はこういう穢い、弱い、くだらないものももっているのだ。俺の良心は苦しんでいる。そういうような立場、色調でプロレタリア文化・文学運動への参加と敗北との経験が作品化された。そして、こういう作家の態度は、当時の気流によって、その作家たちの正直さ、人間らしさ、詐りなさの発露という風にうけとられ、評価されたのである。