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こんにちのぶんがくのてんぼう

今日の文学の展望

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁

青空文庫

は、書下し長篇小説として出版された。「八年制」も「汽車の罐焚き」も好評を得た作品であり、それぞれその作者らしさの溢れたものであったが、例えば「八年制」と同じ作者の「心中し損ねた女」「作家の真実」雑誌『新文化』に執筆された同じ作者の感想等をよみ合わせると、読者は、日常の生活感情と云われるものの内的要素やその質について、複雑な歴史の投影を感じざるを得ないのである。中野重治氏の「汽車の罐焚き」「原の欅」と幾多執筆された文学についての評論とは、その相互的関係において眺めて、やはり、今日この種の作家のおかれている条件の主観的客観的のむずかしさが痛感せしめられる。

本年の後半に入って、これまで描写のうしろにねてはいられないと、独特の話術をもって作品を送っていた高見順氏が「外資会社」「流木」等、調べた材料によって客観的な小説を書きはじめたことは注目をひいた。石川達三氏「日蔭の村」も或る報告文学の試みとして注意をあつめた。

本年七月蘆溝橋の事件に端を発した日支事変は、秋以後、前線に赴いてのルポルタージュとして、文学に直接反映をもって来た。林房雄、尾崎士郎、榊山潤の諸作家が前線近く赴いて、故国へ送ったルポルタージュ、小説の類は、文学の問題として、ルポルタージュの性質を再び考え直させると共に、文学を生む人間経験の諸相について