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さくぶつのひひょう
作物の批評
線上閱讀夏目 漱石《作物の批評(さくぶつのひひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,439 字 · 13 頁
限らぬ。これに接したるとき、白い烏を烏と認むるほどの、見識と勇気と説明がなくてはならぬ。これができるためには以上の条項と法則を知れねばならぬ。知って融通の才を利かさねばならぬ。拘泥すればそれまでである。
現代評家の弊はこの条項とこの法則を知らざるにある。ある人は煩悶を描かねば文学でないと云う。あるものは他にいかほどの採るべき点があっても、事件に少しでも不自然があれば文学でないと云う。あるものは人間交渉の際卒然として起る際どき真味がなければ文学でないと云う。あるものは平淡なる写生文に事件の発展がないのを見て文学でないと云う。しかして評家が従来の読書及び先輩の薫陶、もしくは自己の狭隘なる経験より出でたる一縷の細長き趣味中に含まるるもののみを見て真の文学だ、真の文学だと云う。余はこれを不快に思う。
余は評家ではない。前段に述べたる資格を有する評家では無論ない。したがって評家としての余の位地を高めんがためにこの篇を草したのではない。時間の許す限り世の評家と共に過去を研究して、出来得る限りこの根拠地を作りたいと思う。思うについては自分一人でやるより広く天下の人と共にやる方がわが文界の慶事であるから云うのである。