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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁

青空文庫

そのあげくが、笑ったり、泣いたり、けんかをしたり、仲直りをしたり――言わば、世間並みの恋人どうしが、するような事をして、いつでも夜を明かした。

日の暮れに来て、夜のひき明け方に帰る。――あれが、それでも一月は続いたろう。そのうちに、おれには沙金が猪熊のばばのつれ子である事、今では二十何人かの盗人の頭になって、時々洛中をさわがせている事、そうしてまた、日ごろは容色を売って、傀儡同様な暮らしをしている事――そういう事が、だんだんわかって来た。が、それは、かえってあの女に、双紙の中の人間めいた、不思議な円光をかけるばかりで、少しも卑しいなどという気は起こさせない。無論、あの女は、時々おれに、いっそ仲間へはいれと言う。が、おれはいつも、承知しない。すると、あの女は、おれの事を臆病だと言って、ばかにする。おれはよくそれで、腹を立てた。………)

「はい、はい」と馬をしかる声がする。太郎は、あわてて、道をよけた。

米俵を二俵ずつ、左右へ積んだ馬をひいて、汗衫一つの下衆が、三条坊門の辻を曲がりながら、汗もふかずに、炎天の大路を南へ下って来る。その馬の影が、黒く地面に焼きついた上を、燕が一羽、ひらり羽根を光らせて、すじかいに、空へ舞い上がった。