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ちゅうとう
偸盗
線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁
それがしかも、今夜なんです。おなじみがいに、教えてあげましたから、それ相当の用心をしないと、あぶのうござんすよって。だから、今夜は、きっと向こうにも、手くばりがあるわ。あいつも、今人を集めに行ったところなの。二十人や三十人の侍は、くるにちがいなくってよ。」
「どうしてまた、そんなよけいな事をしたのさ。」
次郎は、まだ落ち着かない様子で、当惑したらしく、沙金の目をうかがった。
「よけいじゃないわ。」
沙金は、気味悪く、微笑した。そうして、左の手で、そっと次郎の右の手に、さわりながら、
「あなたのためにしたの。」
「どうして?」
こう言いながら、次郎の心には、恐ろしいあるものが感じられた。まさか――
「まだわからない? そう言っておいて、太郎さんに、馬を盗む事を頼めば――ね。いくらなんだって、一人じゃかなわないでしょう。いえさ、ほかのものが加勢をしたって、知れたものだわ。そうすれば、あなたもわたしも、いいじゃないの。」
次郎は、全身に水を浴びせられたような心もちがした。
「兄きを殺す!」
沙金は、扇をもてあそびながら、素直にうなずいた。
「殺しちゃ悪い?」
「悪いよりも――兄きを罠にかけて――」