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ちゅうとう
偸盗
線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁
それと同時に、一頭の牙が、すんでに太刀を持った手を、かもうとした。とまた、三頭とも巴のように、彼の前後に輪を描いて、尾を空ざまに上げながら、砂のにおいをかぐように、頤を前足へすりつけて、びょうびょうとほえ立てる。――相手を殺したのに、気のゆるんだ次郎は、前よりもいっそう、この狩犬の執拗い働きに悩まされた。
しかも、いら立てば立つほど、彼の打つ太刀は皆空を切って、ややともすれば、足場を失わせようとする。犬は、そのすきに乗じて、熱い息を吐きながら、いよいよ休みなく肉薄した。もうこうなっては、ただ、窮余の一策しか残っていない。そこで、彼は、事によったら、犬が追いあぐんで、どこかに逃げ場ができるかもしれないという、一縷の望みにたよりながら、打ちはずした太刀を引いて、おりから足をねらった犬の背を危うく向こうへとび越えると、月の光をたよりにして、ひた走りに走り出した。が、もとよりこの企ても、しょせんはおぼれようとするものが、藁でもつかむのと変わりはない。犬は、彼が逃げるのを見ると、ひとしくきりりと尾を巻いて、あと足に砂を蹴上げながら真一文字に追いすがった。
が、彼のこの企ては、単に失敗したというだけの事ではない。