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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《備前名弓伝(びぜんめいきゅうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 頁

青空文庫

これでは猟師などは忽ち万石の身分にも相成るであろう、誠に稀な御家風があるものだ」あたりへ聞えよがしに放言してからからと笑い、思う存分罵り辱しめた。するとそこへ、小姓が足早にやってきて、「滝川どのお上が召します」と伝えた。

「お召し? 拙者をお召しか」「お泉水においであそばします、お早く」

小姓はさっさと引返してしまった。時が時だから、これは光政がいまの声を聞いたのだなと思った。――しかし殿は名君だから拙者の申分はお分りであろう。殊によるといまの言葉をお耳にして、忘れていたおれのことを思い出したのかも知れぬ。いずれにしてもこのお目通りがおれの浮沈の瀬戸際だぞ。

なるべく都合のいい方へ考えながら奥へ行ったが、光政は泉殿で小酒宴をはじめていた。

「幸之進まいったか」「はっ、お召しにより参上仕りました」「相手を申付ける、近うすすめ」「かたじけなき御意、御免」

お側には給仕の小姓が両名だけである。光政はわざと寛いで、しばらくなにげない話をしながら盃を重ねていたが、やがてふと思い出したように、

「先日三之丞となにか勝負をしたそうだな」と云いだした。待ちかねていた言葉だから、幸之進は盃を置いて乗り出した。