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きずだらけのあし
傷だらけの足
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《傷だらけの足(きずだらけのあし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,697 字 · 20 頁
ローレンスは、一方でそのように勇敢であったが、それならローレンスは、一九二〇年代のヨーロッパ社会の中に営まれている自分の人生というものに対して、つよい確信をもち、闘う力をもっていたかといえば、性格的にそういう作家ではなかった。彼にはいつも不安と嫌悪があった。生きてゆくについての恐怖や不安は何だったのだろうか。世界の歴史が成長したこんにち、わたしたちは、このことのややその本質に迫って、理解する可能を与えられている。彼の生存につきまとう不安と恐怖は、とりも直さず第一次大戦前後のヨーロッパ小市民の時代的な不安であったのだった。ヨーロッパの中産階級はそのころから急速に経済能力の不安を感じはじめていた。特権階級の者は、当時なお強固な基礎を失っていなかったし、労働者階級は失業や賃下げに対して闘って、労働して生きてゆく大衆としての力をもっている。ノッティンガムの礦夫の息子として生れ、教育のあった母のおかげと、自分の努力で大学に学ぶことのできたD・H・ローレンスは、「白孔雀」を処女作として、彼独特の文学の道に立った。彼は、礦区の人々の人生をものがたる作家とはならなかった。