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ぼくのむかし
僕の昔
線上閱讀夏目 漱石《僕の昔(ぼくのむかし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,276 字 · 7 頁
――その後早稲田の雇われ教師もやめてしまった。むろん僕が大学学生中の話だぜ。その間僕は下宿をしたり、故家にいたり、あちらこちらに宿をかえていた。僕が大学を出たのは明治二十六年だ。元来大学の文科出の連中にも時期によってだいぶ変わっている。高山が出た時代からぐっと風潮が変わってきた。上田敏君もこの期に属している。この期にはなかなかやり手がたくさんいる。僕らはそのまえのいわゆる沈滞時代に属するのだ。
学校を出てから、伊予の松山の中学の教師にしばらく行った。あの『坊っちゃん』にあるぞなもしの訛を使う中学の生徒は、ここの連中だ。僕は『坊っちゃん』みたようなことはやりはしなかったよ。しかしあの中にかいた温泉なんかはあったし、赤手拭をさげてあるいたことも事実だ。もう一つ困るのは、松山中学にあの小説の中の山嵐という綽名の教師と、寸分も違わぬのがいるというので、漱石はあの男のことをかいたんだといわれてるのだ。決してそんなつもりじやないのだから閉口した。
松山から熊本の高等学校の教師に転じて、そこでしばらくいて、後に文部省から英国へ留学を命ぜられて、行って帰って来て、今は大学と一高と明治大学との講師をやっている。