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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

「兄者、お在室かな。」

大声がして、縁の障子が開いた。辰馬が、荒あらしく踏みこんで来た。

立ったままで、

「兄者、聞こう! 公卿相手の茶坊主ごときやつに抗って、先祖代々の家をつぶして何が面白い――。」

振りあおいだ美濃守の片面に、燭台の火が、辰馬の持って来た廊下からの風にあおられて、黄色く息づいた。

「賢才ぶったことをいうな。」

といった兄には、やはり、ちょっと兄らしい重みがあった。その偉躯とともに、武芸家として、また、世事に通じた大名らしくない大名として、平常辰馬の尊敬している兄でもあった。

それだけに、今度の、事を好むような態度が、いっそう不思議でならなかった。

「やるものをやらんと、意地悪をしますぞ、兄者。」

どかりと、坐った。

「わざとうそを教えて役儀に不都合をきたさしめ、それとなく賄賂を催促するということです――。」

「賄賂の督促など、おれには馬の耳に念仏だよ。何もやらんのではない。久野に命じて、四十五文の扇箱をやった。」

「師匠番ですぞ。いくらか風にならって――。」

美濃守は、大きな声を出した。

「吉良には、頼まん。」

「兄者は、殿上の扱いをすべて御存じか。