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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

平茂、御注進に。じつぁね、例の女の子、行火がわりの、へへへ、賞めてやっていただきやしょう。見ただけで、ぶるるとくるようなやつが、殿様、みつかりやしたんで。」

平茂に、新しい妾の周旋を頼んであったことを思い出しながら、吉良は、不愉快な感情のやり場がなくて、孫三郎をきめつけていた。

「扇箱一つで、殿中引廻し、か。虫のいい! これ、進物の額をいうのではない。が、ものには順があるぞ、順が。」

蒼ざめた吉良の顔に、無礼を愛嬌にしている、幇間のような平茂も飽気に取られた。

三

「相手が悪いから、心配するのだ。」

辰馬は、江戸ふうの青年だけに、めっきり浪人めいて来ていた。

大きな胡坐をかいて、御用部屋の壁によりかかった。

吉良へ扇箱を届けて帰邸ってきた久野彦七も納戸役人の北鏡蔵も金奉行の十寸見兵九郎も黙っていた。

岡部辰馬は、岡部美濃守の弟だった。分家してぶらぶらしていたが、兄が勅使取持役を受けてからは、ほとんどこの屋敷に詰めきりだった。

「まずかったかな。」と、口をへの字にして、もう一度老人たちを見まわした。「誰が扇箱などを持って行けといったのだ。まるで、からかうようなものじゃないか。