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げんろくじゅうさんねん
元禄十三年
林 不忘
線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁
」
「その前に、おれが兄貴と喧嘩する。金で円くすむのに、家のことも思わずに、何だ。おれにも考えがある。離せ!」
振りきって、跫音が、美濃守の居間のほうへ、廊下を鳴らして曲った。
夜の客
一
「平茂か。進むがよい。」
吉良の声を機に助かったように孫三郎が座を辷ると、入れ違いに、平野屋茂吉が吉良の前にすわった。
「驚きました。達磨は面壁、殿様肝癖――。」
つるりと顔を撫でて、平伏しながら、
「何ごとかは存じませんが、平に御容赦。ほどよい女子を探しあてましたる手前の手柄に免じて、ここは一つ、お笑い下さいまし。お笑い下さいまし。」
吉良は、穿き古した草鞋のような感じの、細長い顔をまっすぐ立てたまま、平茂のことばは、聞こえていて聞こえていなかった。
「美濃めが――。」
と、口の隅から、つぶやいた。
――高家筆頭として、公卿堂上の取次ぎ、神仏の代参、天奏衆上下の古礼、その他有職故実に通じている吉良だった。勅使饗応を命じられた大名は、吉良の手引きがなくては、手も足も出ないのだった。自然、この役を勤める諸侯から吉良へ賄賂を贈ることが、毎年の例になっていて、吉良のほうでも、いつのまにか、今度は誰それがつとめるのだから、およそいくらぐらいは持って来るであろう、と、心待ちするようになっていた。