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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
「黙って黙って! 矢をつがえました」
「あれが竹林派の固めかな」
「いやいやあれは昼行灯流で」
「ナール、これはよう云われました」
この時葉之助は矢を取るとパッチリつがえてキリキリキリ、弦一杯に引き絞ると、狙いも付けず切って放した。
「どうだ?」
と侍達は眼をった。外れたと見えて旗が出ない。
「おやおや最初から仕損じましたな」
「二本目は与一も困る扇かな……さあどうだ昼行灯殿!」
急かず周章てず葉之助はすかさず二の矢を飛ばせたが、これも外れたか旗が出ない。
「ウワーッ、いよいよ昼行灯だ! 一の矢二の矢を仕損じながら、沈着ようはマアどうだ」
「恥なければ心安し。一向平気と見えますな」
「殿も小首を傾げておられる」「いったい殿がお悪いのだ。あんなものを召使うばかりか贔屓にさえもしておられる」「あれは殿の酔狂さ」
「それまた射ますぞ。静かに静かに」
しかし葉之助は益※(二の字点、1-2-22)泰然と構え、姿勢に揺るぎもなく、三の矢四の矢五の矢まで、呼吸も吐けない素早さで弦音高く射放したが、旗はついに出なかった。
ガッチリ弓を棚に掛け、袴両袖をポンポンと払うと、静かに葉之助は射場を離れ、端然と殿の前へ手を支えた。