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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
これは怒るが当然だ! 我石棺を引き上げると云うも、法性の冑を奪い返し、家宝にしたいに他ならぬ。何んとこれでもこの企て、好奇心の結果と考えるかな」
「いや」と武右衛門は顔を上げた。
「さようなご深慮とも弁えず、賢しらだって諫言仕り今さら恥ずかしく存じまする」
「解ってくれたか。それで安心」
「ご免」と云うと武右衛門はスックとばかり立ち上がった。クルクルと帯を解く。
「いよいよ武右衛門湖水へ入る気か」
「殿、二言はござりませぬ」
「勇ましく思うぞ。きっと仕れ」
「は」
と云うと衣裳を脱ぎ、下帯へ短刀を手挟むと、屹と水面を睨み詰めた。両手を頭上へ上げると見る間に、辷るがように飛び込んだ。水の音、水煙り、姿は底へ沈んで行く。
頼正を始め家臣一同、歯を喰いしばり眦を裂き、じっと水面に見入ったがしばらくは何んの変ったこともない。
と、忽然と浮き上がって来たのは、南無三宝! 血汐であった。
「あっ、武右衛門もやられたわ!」
頼正、躍り上がつて叫んだ時、水、ゴボゴボと湧き上がり、その割れ目から顔を出したのは、血にまみれた武右衛門である。
「それ、者ども、武右衛門を助けい!」
「あっ」