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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

「はてな?」と呟いて葉之助は思わず足を止めたものである。

二三

音楽の音は幽かではあるが美妙な律呂を持っている。楽器は羯鼓と笛らしい。鉦の音も時々聞こえる。

葉之助はしばらく聞いていたがやがて忍びやかに寄って行った。木蔭に隠れて向こうを見ると、神明造りの館の庭に数人の女が坐っていたが、いずれも若い水狐族の女で、一人は笛、一人は羯鼓、一人は鉦を叩いている。そうして一人の老年の女が、その中央に坐っていたが何やら熱心に祈っているらしい。チン、チン、チンと鉦の音、カン、カン、カンと羯鼓の音、それを縫って笛の音がヒュー、ヒュー、ヒューと鳴り渡る。それが睡気な調和をなし、月夜を通して響き渡る。

静かに老婆は立ち上がった。それから両手を差し出した。それを上下へ上げ下げする。何かを招いているらしい。

と、城下の方角から、一つの黒点があらわれたが、それが風のように走って来る。魔法使いの老婆の手が遥かに犠牲を呼んだのでもあろう。チン、チン、チン、カン、カン、カン、ヒュー、ヒューと音楽の音は次第次第に調子を早め、上げ下げをする老婆の手がそれに連れて速くなる。