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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

飼い慣らされた猛獣が、血の味を知ったら大変である。原始的性格の葉之助が殺人の味を知ったことは、それより一層危険な事である。

のみならずここにもう一つ奇怪な現象が行われた。

それは彼が殺人をしたその翌朝のことであったが、床から起き出た彼を見ると、母親のお石が叫ぶように云った。

「お前、いつもと顔が異うね」

「本当ですか? どうしたのでしょう」

で、葉之助は鏡を見た。なるほど、いささか異っている。白い顔色が益※(二の字点、1-2-22)白く、黒い瞳がいよいよ黒く、赤い唇が一層赤く、いつもの彼よりより一層美しくもあれば気高くもある、一個窈窕たる美少年が、鏡の奥に写っていた。

思わず葉之助は唸ったものである。それから呟いたものである。

「不思議だ、不思議だ、何んということだ」

……が、決して不思議ではない。何んのこれが不思議なものか。

美しい犬へ肉をくれると、より一層美しくなる。死骸から咲き出た草花は、他の草花より美しい。

人を殺して血を浴びた彼が、美しくなったのは当然である。

四

二度目に人を斬ったのは、陽の当たっている白昼であった。

その日彼は山手の方へ的もなくブラブラ歩いて行った。