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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
一一
「はい、よく名前は承知しております」
「帯刀様のご様子を見ると、大分玄卿とはご懇意らしい。だがマアそれはよいとして、さてその時の話だが、物騒な方面へ及んだものさ。と云うのは他でもない、毒薬の話に花が咲いたのさ。どんな毒薬で人を殺したら、後に痕跡が残らないかなどとな」
「なるほど、これは物騒で」
「で俺はいい加減にして、お暇をして帰ったが、いい気持ちはしなかったよ」北山はしばらく黙ったが、「俺の云うお家騒動の意味、どうだこれでも解らないかな」
「ハイ、どうやら朧気ながらも解ったようでございます」一学は初めて頷いた。
「で俺は案じるのだ、どうぞご次男金二郎様に、もしものことがないようにとな」
「これは心配でございますな」
「今度の江戸の事件について、誰かもっと詳しいことを知らせてくれるものはあるまいかと、心待ちに待っているのだがな」
その時、襖が静かにあき小間使いが顔を現わした。
「江戸からのお飛脚でございます」
「江戸からの飛脚? おおそうか。いや有難い。待っていたのだ。すぐ裏庭へ通すよう」
「かしこまりましてございます」
小間使いが去ったその後で、天野北山は立ち上がった。