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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
折れた刀は用に立たない。で彼は投げ棄てた。そうして脇差しを引き抜いた。
こうしてまたも葉之助は、後へ帰らざるを得なかった。さて元の場所へ帰っては来たが、新たにとるべき手段はない。茫然佇むばかりであった。勇気も次第に衰えて来た。だがこのまま佇んでいたのでは、遁がれる道は一層なかった。
そこで無駄とは知りながら、西の方へ廻って行った。例によって角へ来た。用心しながらゆるゆる曲がった。と行手に石垣があり、立派な門が建っていた。
「ははあ門があるからには、門の向こう側は往来だろう。よしよしあの門を乗り越してやれ」
門の柱へ手を掛けた。ひらりと屋根へ飛び上がった。そうして向こう側を隙かして見た。
思わず彼は「あっ」と云った。そこに大勢の人影が夜目にも解る弓姿勢で、タラタラと並んでいたからであった。弓を引き絞り狙っているのだ。
彼は背後を振り返って見た。そこでまた彼は「あっ」と叫んだ。十数人の人影が、鉄砲の筒口を向けていた。
彼はすっかり計られたのであった。腹背敵を受けてしまった。もう助かる術はない。飛び道具には敵すべくもない。
が、しかし彼の頭を、その時一筋の光明が、ピカリと光って通り過ぎた。