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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

「はいこの頃は毎晩のように、どこかへお出かけでございます」

「ははあさようか、毎晩のようにな」

――それではやはり葉之助は、下屋敷へ警戒に行くものと見える。今夜も行ったに相違ない。きっと駈け違って逢わなかったのだろう。

天野北山はこう思った。

「葉之助殿お帰りになったら、俺が来たとお伝えくだされ。改めて明朝お訪ね致す」

「大火の様子、ご注意なされ」

で北山は往来へ出た。

そうして新しく駕籠を雇い、神田の旅籠屋へ引っ返した。

葉之助は草の上に眠りこけていた。決して不覚とせめることは出来ない、彼は実際一晩のうちに、余りに体を使い過ぎた。これが尋常の人間なら、とうに死んでいただろう。

だが眠ったということは、彼にとっては不幸であった。

黒々と空に聳えている森帯刀家の裏門が、この時音もなくスーと開いた。

忍び出た二つの人影があった。一人は立派な侍で、一人はどうやら町人らしかった。

地上に引かれた筋に添い、葉之助の方へ近寄って来た。

間もなく葉之助の側まで来た。

二人は暗中で顔を見合わせた。

「紋兵衛、これで秘密が解った」こう云ったのは武士であった。「ここに眠っているこの侍が、俺達の計画の邪魔をしたのだ」