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くらのすけるす
内蔵允留守
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《内蔵允留守(くらのすけるす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,082 字 · 24 頁
「はい、存じて居ります」娘は歯切れのいい声で、「……先生のお住居でしたら、あれあの森の向うでございます、彼処にいま掘り返してある土が見えましょう、あの手前を右へはいった森の蔭でございます」
「忝ない、足を止めて済まなかった」虎之助は会釈をして娘と別れた。
彼は近江国蒲生郡の郷士の子で、幼少の頃から刀法に長じ、近藤斎という畿内では指折りの兵法家の教えを受けていたが、この夏のはじめに皆伝を許され、これ以上は江戸の別所内蔵允どのに就いて秘奥を学ぶようにと、添書を貰って出て来たのであった。……別所内蔵允は天真正伝流の名人で、曽て将軍家光から師範に懇望されたこともあるが、既に柳生、小野の二家がある以上は無用のことだと云って受けず、その気骨と特異の刀法を以て当代の一勢力を成していた。虎之助はむろんその盛名を聞いていたから、勇んで江戸へ来たのであるが、そのときすでに内蔵允は道場を去り、目黒の里に隠棲した後であった。それで旅装を改める暇もなく、直ぐに此処へ尋ねて来たのだが、予想したより辺鄙な片田舎で、何処をどう捜してよいか見当もつかなかったのである。
教えられたとおり四五町あまり行くと、右手に土を掘り返したかなり広い開墾地があって、半裸になった一人の老農夫が、せっせと鍬を振っていた。