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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
線上閱讀徳永 直《冬枯れ(ふゆがれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 頁
町並はひどく不揃いで、ここでも不景気が剥き出しにあらわれていた。大きな穀物問屋の白壁に「売家」の貼紙が雨風に曝されて黄色くなっていたり、鷲尾がまだ土地にいた頃は旺んだった時計屋の看板が、傾むいて軒と一緒に倒れかかっていたりした。町の中程にある「竹永米屋」も、彼が小僧していた頃の面影はなくて、土蔵の壁は落ち、低い軒先にシオたれた暖簾の文字が読めないほど古ぼけていた。鷲尾はゆきかえりに店先をのぞくのだが、しかしそれらしい娘の姿は見出すことが出来なかった。
「オイF、おれだよ……」
赤いペンキで「○○理髪店」と書いてある硝子戸に顔をくっつけて中をのぞくと、彼と同年ぐらいの、白い仕事着を被た男が、読んでいる将棋の本ごしに億劫そうにこっちをみたが、やっと判ると「おう」と云った。
「寒かね……」
内部へ入るとFは、いつ帰って来たかとも、暫らくだったとも云わなかった。職業に似合わないヒゲづらの、物憂そうな眼で、鷲尾を一瞥したきり、あとは黙ってしまった。
Fは元来、鷲尾と小学時代からの友達で、古いトルストイアンから転向してきた男だった。いつも先頭に起つようなことはなかったが、この虚無的な変りようには駭かずにはいられなかった。