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はじめてちちぶにはいったころ
初めて秩父に入った頃
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《初めて秩父に入った頃(はじめてちちぶにはいったころ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,522 字 · 5 頁
誰もが今年の山旅から帰れば、すぐに翌年の計画を立て、「来年は何山に登るぞ」と仲間に吹聴して、先占権を主張したものだ、仲間も笑って之を容認し、抜け懸けの功名を争うようなことはしなかった。優良な案内人夫は何処でも得られるという訳のものではないので、前年から約束して置いた、素朴な山人達は他から利を以て誘われても、無断で約束に背くことなどは殆どなかったし、誘うような人も亦少なかった。
しかし張り切った心に待つ一年が如何に楽しいものであったとしても、ああ何とまた長いものであったろう。この辛抱のお蔭で登山の快は倍加した訳でもあるが、出来ることなら季節を選ばず山へ行きたい、そして絶え間なき心の渇を少しずつでも癒やしたい。こういう願望が抵抗し難い勢でむくむくと擡頭したのは私一人ではなかった、よし行こう。夫には比較的交通が便利で、割合に近い処であることが必要だ、しかも高度は少くとも二千米以上で、処女の地域が広ければ広い程よい。そこで地図を物色する、丹沢、道志、御坂山脈の諸山は、惜しい哉高度が低い、奥上州の山は交通の不便からてんで問題にならなかった、残るは秩父山地のみである。