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はじめてみたるおたる
初めて見たる小樽
石川 啄木
線上閱讀石川 啄木《初めて見たる小樽(はじめてみたるおたる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,606 字 · 7 頁
内地の大都会の人は、落し物でも探すように眼をキョロつかせて、せせこましく歩く。焼け失せた函館の人もこの卑い根性を真似ていた。札幌の人はあたりの大陸的な風物の静けさに圧せられて、やはり静かにゆったりと歩く。小樽の人はそうでない、路上の落し物を拾うよりは、モット大きい物を拾おうとする。あたりの風物に圧せらるるには、あまりに反撥心の強い活動力をもっている。されば小樽の人の歩くのは歩くのでない、突貫するのである。日本の歩兵は突貫で勝つ、しかし軍隊の突貫は最後の一機にだけやる。朝から晩まで突貫する小樽人ほど恐るべきものはない。
小樽の活動を数字的に説明して他と比較することはなかなか面倒である。かつ今予はそんな必要を感じないのだから、手取早くただ男らしい活動の都府とだけ呼ぶ。この活動の都府の道路は人もいうごとく日本一の悪道路である。善悪にかかわらず日本一と名のつくのが、すでに男らしいことではないか。かつ他日この悪道路が改善せられて市街が整頓するとともに、他の不必要な整頓――階級とか習慣とかいう死法則まで整頓するのかと思えば、予は一年に十足二十足の下駄をよけいに買わねばならぬとしても、未来永劫小樽の道路が日本一であってもらいたい。