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わかれたるつまにおくるてがみ
別れたる妻に送る手紙
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁
そうしてくれ。」と私が頼むように言うと、
「そうすると、またあなたが因縁を付けるから……厭だ。」
「だって今夜だけ好いじゃないか。」
「じゃあなた、一足前に帰っていらっしゃい。私柳町に一寸寄って後から行くから。」
私は言うがまゝに、独り自家に戻って、遅くまで待っていたけれど、お前は遂に帰って来なかった。あれッきりお前は私の眼から姿を隠して了ったのだ。
それから九月、十月、十一月と、三月の間、繰返さなくっても、後で聞いて知ってもいるだろうが、私は、お前のお母さんに御飯を炊いて貰った。お前も私の癖は好く知っている。お前の洗ってくれた茶碗でなければ、私は立って、わざ/\自分で洗い直しに行ったものだ。分けてもお前のお母さんと来たら不精で汚らしい、そのお母さんの炊いた御飯を、私は三月――三月といえば百日だ、私は百日の間辛抱して食っていた。
お前達の方では、これまでの私の性分を好く知り抜いているから、あゝして置けば遂に堪らなくなって出て行くであろう、という量見もあったのだろう。が私はまた、前にも言ったように、自然に心が移って行くまで待たなければ、何うする気にもなれなかったのだ。