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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

……自分でも「いけない!」というし、情夫のある者は何うすることも出来ない。と言って、あゝして、あのまゝ置くのも惜しくって心元ない。銭がうんと有れば十日でも二十日でも居続けていたい。

「あゝ銭が欲しいなあ!」と、私は盗坊というものは、斯ういう時分にするのかも知れぬ、と其様なことまで下らなく思いあぐんで、日を暮らしていた。

そんなにして自家に独りでいても何事にも手に付かないし、そうかと言って出歩いても心は少しも落着かない。それで、またしても自動電話に入ってお宮の処に電話を掛けて見る。

「宮ちゃん、お前あんなことを言っていたから、私は本当かと思っていたのに、主婦さんに聞くと、何処にも行かないというじゃないか。君は※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)ばっかり言っているよ。君がいてくれれば僕には好いんだが、あの時は喪然して了ったよ。」と恨むように言うと、

「えゝ、そう思うには思ったんですけれど、種々都合があってねえ。……それに自家の姉さんも、まあ、も少し考えたが好いというしねえ。……あなたまた入らしって下さい。」

「あゝ、行くよ。」

と、言うようなことを言って、何時まででも電話で話をしていた。