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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《前記天満焼(ぜんきてんまやけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 頁
……しかしそれにしても、御主人の行方の、一日も早く知れますよう、願わしいものでございます」
そっと品子を見やったが、
「品子様とやら御心配でござろう。しかし心をしっかりと持たれ、決してお取り乱しなされぬよう」
こうは云ったが心の中では、
「可哀そうに少しく上気して居る。こじれると発狂もしかねまい」
「それでは御免」と立ち上った。
「主人在宅でございましたら、お扱い様もございますのに、この様な有様でございますれば……」
気の毒そうに長吉が云った。
「いやいや何の、心配は御無用」
「それでは、ただ今のお住居は?」
「神田神保町の若菜屋でござる」
云いすてると宇和島鉄之進は、事情を審しく思ったのであろう、小首を傾げながら座を立った。
そこで、長吉は送って出たが、後に残った品子という娘が、不意に甲高い声を上げた。
「妾には解る! 殺されていなさる! おお、お父様もお兄様も!」
フラフラと立つと眼を抑えた。
「お久美様の祟りだ、お久美様の祟りだ!」
フラフラと部屋から外へ出た。
水に螢をあしらった、京染の単衣が着崩れてい、島田髷さえ崩れている。後毛のかかった丸形の顔が、今はゲッソリ痩せている。