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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁

青空文庫

3

「お妻とかいう変な女を連れて、水品先生には三月ほど前に、たしかにこの地へ参られましたが、何と思ったか武州方面へ向け、すぐに出発なさいましたよ。あの人とくると武州方面にも、贔屓にしている親分さんが、相当たくさんありますし、あの人の剣術の先生という人が、有名な小川の逸見多四郎様なので、旁々あちらへ参られたのでしょうよ」

これが紋兵衛の言葉であった。

(甲源一刀流では宗家ともいうべき、逸見多四郎先生が、さては陣十郎の師匠だったのか)

そう思って主水はヒヤリとした。

(ではその逸見先生の屋敷に、ひそかにかくまわれているかもしれない)

そこで主水と澄江の二人は、武州をさして旅をつづけ、今や上尾宿まで来たのであった。

江戸はほんの眼の先にあり、自分の屋敷も眼の先にあったが、敵の居場所さえ突き止めない先に、まさか屋敷へも立寄られない。こう思って二人は江戸入りさえ避けて、すぐに上尾宿へ来たのであった。

「お早いお着きで。……いらっしゃいまし」

女中に案内されて上ったのは桔梗屋という旅籠屋であった。

逸見家のある小川宿へ向け、実はすぐにも行きたいのであったが、うかうか行って陣十郎のためにもしも姿を見付けられたら、返り討ちに逢わないものでもないと、そんなように心配もされたので、まだ日は相当高かったが、この宿へ足を止めたのであっ