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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁
と、源女は右手を出した。
その掌に独楽は止まった。
グルリと掌を裏返した。
逆さになったまま掌に吸いつき、独楽は森々と廻っている。
どっと喝采が見物の中から起こった。
しかしどうしたのかその一刹那、ポタリと独楽が、掌から落ち、源女は放心でもしたように、桟敷の一所を凝然と見詰めた。
2
恐怖がその顔に現われている。
(どうしたんだろう?)と驚きながら、源女の見詰めている方角へ、浪之助も眼をやった。
(や)とこれも驚いた。
そこに、桟敷に、見物にまじって、榊原式部少輔様のお長屋の庭で、老武士を相手に試合をしていた、陣十郎という壮年武士が、舞台を睨むように見ているではないか。
単なる浪之助の思いなしばかりでなく、陣十郎の眼と源女の眼とは、互いに睨み合っているようであり、源女が独楽を掌から落とし、放心したように茫然としたのも、陣十郎の姿を認めたからであると、そんなように思われる節があった。
(二人の間には何かあるな)
そんなように思われてならなかった。
「弘法にも筆のあやまり、名人の手からも水が洩れる、生独楽を落としました源女太夫のあやまり、やり直しは幾重にもご用捨……」