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ちからもち
力餅
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《力餅(ちからもち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 頁
右岸に見られるのは、かえで、かば、なら、うるしの類です。甲州街道はそのかげにあるのです。しんぼうのいい越後の商人は昔からそこを往復したと聞きます。直江津から来る塩ざかなの荷がそんな山地まで深入りしたのも、もっぱらその街道を千曲川について、さかのぼったものだそうです。
両岸には、南牧、北牧、相木などの村々がちらばっていまして、金峯山、国師が岳、甲武信が岳、三国山の高くそびえたかたちを望むこともでき、また、甲州にまたがった八つが岳の山つづきには、赤々とした大くずれの跡をながめることもできます。その谷の突き当たったところが海の口村で、千曲川の岸もそのへんまで行くと、いかにも川上らしい。高い山々の間をめぐりにめぐって流れる水の声には、思わず、耳をそばだてます。山の空気というものが、そんなにあたりを深く思わせるのです。
海の口村は、もと川岸にありましたのが、川水のあふれたために、村の人たちは高原のすそへよって移り住んだとのこと。風や雪を防ぐために石をのせた板屋根を見ると、深山ずまいも思いやられます。そのへんに住んでいる人たちの仕事には、飼馬、耕作、杣、炭焼きなどありますが、わけても飼馬には熱心で、女ですら馬の性質をよく暗記しているほどです。