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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

十二神貝十郎手柄話

ままごと狂女

一

「うん、あの女があれなんだな」

大髻に黒紋付き、袴なしの着流しにした、大兵の武士がこういうように云った。独り言のように云ったのであった。

そこは稲荷堀の往来で、向こうに田沼主殿頭の、宏大の下屋敷が立っていた。

「世上で評判の『ままごと女』のようで」

こう合槌を打つものがあった。旅姿をした僧侶であった。

「つまり狂人なのでありましょうな」

これも単なる問わず語りのように、こう呟いた人物があった。笈摺を背負った六部であった。と、その側に彳んでいた、博徒のような男が云った。「迫害されて成った狂人なのでしょうよ」

「『ね、もう一度ままごとをしようよ』こう云って市中を狂い廻るなんて、おお厭だ、恥ずかしいことね」

すぐにこう云う者があった。振り袖を着た町娘で、美しさは並々でなかったが、どこかに蓮っ葉なところがあった。

「それが一人や二人でなく、この頃月に幾人となく、ああいう狂人の出て来るのは、変だと云えば変ですなあ」

こう云ったのは総髪物々しく、被布を着た一人の易者であった。冷雨がにわかに降り出したので、そこの仕舞家の軒の下に、五人は雨宿りをしたものと見える。