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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

駕籠舁きが娘を駕籠へ乗せて、今やさらって行こうとしていた。

「こいつら!」と貝十郎は一喝した。駕籠舁きが逃げてしまった後で、貝十郎は女を見た。

「や、昨日の娘ごではないか」

「まあ」と娘も驚いたようであった。「あぶないところを重ね重ね」

「それはこっちでも云うことだが……」

「あれ、幸い家の者が……」

三十五、六歳の乳母らしい女が、息をはずませて走って来た。

「お三保様、申しわけございません」

その翌日のことであった。木曽川の岸で悲鳴がした。

(ひょっとするとあの女だぞ)

思いはしたが貝十郎は、声のする方へ走って行った。筏師らしい荒々しい男が、お三保を筏へ引きずり込み、急流を下へ流そうとしていた。しかし貝十郎の走って来るのを見ると、筏師と筏とは川下へ逃げた。「娘ご、これで三度だな」「重ね重ね、ほんとうにまあ……」「隣り村はなんという村だ?」「駒ヶ根村でございます。……爺や、お前、何をしていたのだよ」「はいはいお嬢様、申しわけもない……」

六十近い下僕らしい男が、汗を拭き拭き走って来た。

(あれ、幸い、家の者が――と云う段取りになったという訳か)貝十郎は思い思い別れた。