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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

「はい、大丈夫でございます」

「八人芸のお前なんだからな」

「とんだものがお役に立ちまして。……」

「相手は六人だから訳はあるまい」

「癖を取るのは訳はないんですが、六人が一緒に集まって、話しているところへぶつかるのが大骨折りでございました」

「一緒に住んでいないのだからな」

「みよし屋の寮だけがまあまあで」

「だから俺が教えたのさ。三人住んでいるのだからな」

「娘ッ子が難物でございましたよ」

「そうだったろう、大いに察しる」

「いつご用に立てますので?」

「大体明日の晩だろう」

「さようでございますか、よろしゅうございます」

こんなことで我輩は蔦吉と別れた。

我輩は好奇の人間なので、こういう蔦吉といったような、やくざな芸人には知己があり、手なずけることも出来たのさ。

それから我輩は浜の方へ行った。海は波が高かった。桟橋などもきしんでいた。で浜には幾艘かの小舟が、引き上げられて置かれてあった。月があったので明るかったが、それだけに波と波とがぶつかり、白泡立つのが物凄く見えた。

我輩は北の方へ渚づたいに歩いた。

渚は湾をなしていて、その行き止まりが岩の岬で、それを廻ると潮湯治場外になり、潮湯治場外の海はわけても荒く、そこで泳ぐ者はめったになかった。