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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁
しかしその時木立の蔭から、こう云う声が聞こえて来たので、引っ返すことは出来なかった。
「中へはいってごらんなされ。さよう、田沼侯のお屋敷の中へ! せめてお屋敷の庭へなりと。……貴殿がおはいりになられるようなら、拙者ご案内をいたすでござろう」
十二神貝十郎の声であった。
「十二神氏、そこにおられたのか」新八郎はテレたように云った。「田沼侯のお屋敷へはいれと云われる、何んの必要がありましてかな?」
「『ままごと』の中に何があるか、献上箱の中に何があるか、貴殿お知りになりたくはないので?」尚も木蔭から貝十郎は云った。「貴殿の恋人お品殿が、松本伊豆守に引き上げられた。その松本伊豆守が、献上箱と『ままごと』とを仕立てて、たった今田沼侯の屋敷へはいった。二品は賄賂の品物でござる。ところで、世上にはこう云う噂がござる。人形と称して生きた美女を献上箱の中へ入れ、好色の顕門へ納れるという噂が。……」
「それでは今の献上箱の中に。……」
「お品殿がはいっておられようも知れぬ」
「行こう!」
「行かれるか?」
「屋敷の中へはいろう!」
「ご案内しましょう。おいでなされ」
老中田沼侯の下屋敷の庭へ、外から忍んで入るというようなことは、考えにも及ばない不可能事のように、今日では想像されるけれど、あながちそうでもないのであって、鼠小僧というような賊