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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
線上閱讀海野 十三《千早館の迷路(ちはやかんのめいろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 頁
(田鶴子の声だ!)
帆村はすかさず返事をした。
「へい、遅くなりやして……」
「仕様がないね。あたしが替りに怒られているのよ。早く謝ってよ」
「へいへい。――どうぞお手をおあげ下さい」
と、帆村はピストルを構えてカーテンの脇からぬっと入ったものの、彼は危く気が遠くなるところだった。その場の異様な光景! いや、世にも恐ろしき舞台面だ!
大きな純白の絹を伸べたベッドがある。そこに上半身を起している死神のような顔をした痩せ衰えた男。それと、その横に寄り添っている凄艶なる女性――それこそ田鶴子に違いなかったが、気味の悪い死神のような病人は何者?
田川勇ではない。
帆村のピストルが見えぬか、二人の男女は平然としている。男の手にあるシャンパン用の硝子盃へ、女は銀色の大きな容器から血のように真赤な酒をつぐ。
男はその盃を目の高さにあげて透して見てにやりと笑う。盃は紫色の唇へ近づく。ごくり、ごくりと、うまそうに呑み終わって、死神男は盃を唇から放すを、傍なる女は白いあらわな腕をさし出して盃を受け取る。死神男の感にたえたという舌打――突然その男が、皺枯れた声を張り上げた。