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はんしちとりものちょう

半七捕物帳

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《半七捕物帳(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,208 字 · 30 頁

青空文庫

誰袖は所詮助からない命ですから、いっそ心中した方がましだったかも知れませんが、永太郎はまさかに死罪にもなりますまいから、もう一と足のところで可哀そうなことをしました」

これで辰伊勢の寮の秘密もすっかり判ったが、まだ一つの疑いがわたしの胸に残っていた。

「すると、その徳寿とかいう按摩はなんにも知らなかったんですね」

「徳寿という奴は正直者で、誰袖の文使いをしたほかには、全くなんにも知らなかったようです」

「その徳寿が辰伊勢の寮へ行くことを、なぜそんなにいやがったんでしょう。誰袖のそばには何か坐っているなんて、めくらの癖にどうして感付いたんでしょう」

「さあ、それは判りませんね。そういうむずかしい理窟はあなた方のほうがよくご存じでしょう。辰伊勢の寮の床下にはおきんの死骸が埋まっていたんです」

半七老人はその以上に註釈を加えてくれなかった。わたしが、この物語を「春の雪解」と題したのは単に半七老人の口真似をしただけのことで、事実はかの直侍と三千歳との単純な情話よりも、もっと深い恐ろしいもののように思われてならない。