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はんしちとりものちょう

半七捕物帳

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《半七捕物帳(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,208 字 · 30 頁

青空文庫

二

「それが何と云って、お話のしようもないんですよ」と、徳寿は顔をしかめてささやいた。

「まあ、旦那。聞いてください。わたくしが奥へ通されて、花魁の肩を揉んでいますと……大抵いつも夜か夕方ですが……花魁のそばに何か来て坐っているような工合で……。いいえ、それが新造衆や女中達じゃありません。そんな人達ならば何とか口を利くでしょうが、初めから終いまで一度も口を利いたこともないので、座敷のうちは気味の悪いほどにしんとしているんです。まあ、早く云えば、幽霊でも出て来て、黙っているんじゃないかと思われるようで……。わたくしは身体がぞっとして、どうにもこうにも我慢が出来ないんでございます。それですから、仲働きのお時さんには気の毒ですけれども、この頃は無理に振り放して逃げてくるので……。いえ、もう、一軒のお得意ぐらいはしくじっても仕方がございません」

なんだか理窟があるような、理窟がないような、一種奇怪な物語をこの盲人から聞かされて、半七も黙ってかんがえていた。日が暮れても雪はまだ降りやまないらしく、白い花びらが暖簾をくぐって薄暗い土間へときどき舞い込んで来た。

二

もとより盲の云うことで、別に取り留めた証拠もないのであるが、半七はそれを一種の不思議な話として、ただ聞き流してしまうわけには行かなかった。