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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《卵塔場の天女(らんとうばのてんにょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,251 字 · 94 頁

青空文庫

を言うのである。

思っても知れよう、これをそのままで引取る法があるものか。

推し返す、遣返す――突込む、突放す。引立てる、引手繰る。始末がつかない。

私でさえ、その始末のつかぬのが道理だと思った。

中に髯のある立派な紳士が、一公職の名のりを上げた。

「この中には、藩侯御一門の御老体も見えておられる。私も、武士の血を引いておりますぞ。さ、おいで下さい。」

と云った時は、

「能役者は素町人です、が失礼します。」

と云った、八郎はぶるぶるした。

皆黙った。寂然とした。

店に居た、息子も若い衆も居直ったのである。

「酔覚めだよ。」

とお悦が小さな声で、

「雪代、雪代。」

すっと寄ると、

「あ、内の事はお嫁さんにさせないと気まずいね……姉さん、」

嫁御は、もう台所から半身出ていた。

「広袖を出しておくれ、……二階だよ。」

「まあ、小父さん、お寒そうね。」

と雪代が店へ出ると、紺地に薄お納戸の柳立枠の羽織を、ト、白い手で、踞った八郎の痩せた背中へ、ぞろりと掛けた。帯腰のしなやかさ、着流しはなおなよなよして、目許がほんのりと睫毛濃く、莟める紅梅の唇が、艶々と、静な鬢の蔭にちらりと咲く。