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とりかえしものがたり
取返し物語
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《取返し物語(とりかえしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 頁
源右衛門(同じく泣きながら)『辛い娑婆とは、容易く口では言っては居たが、斯くまで辛いと知るは今が始めて。これにつけても期するところは弥陀の浄土。いずれ彼方で待ち合すとしよう。ぐずぐずしているうち心がにぶろうも知れぬ。では、いつとは言わずに直ぐに今から、伜を連れに山科へ出かけるとしようかい』
(源右衛門行きかける。おさき留める)
おさき『行きなさるなら門出の仕度。此の世のお礼やら、あの世のお頼みやら、仏様にお燈明なとあかあかあげて、親子夫婦が訣れのお念仏唱えさせて頂きましょう』
源右衛門『よいところへ気が付いた』
(二人で仏壇の扉を開け、礼拝の支度)
舞台半転
(源右衛門宅の裏の浜辺。源右衛門の家の背戸は、葉の落ちた野茨、合歓木、うつぎなどの枝木で殆んど覆われている。家の腰を覆うて枯蘆もぼうぼうと生えている。はね釣瓶の尖だけが見える。舞台の中央は枯草がまだらな浜砂。潮錆び松が程よき間隔を置いて立っている。舞台奥は琵琶湖の水が漫々と湛えている。上手に浮見堂が割合に近く見えて来ている。下手の遠景に三上山がそれかと思うほど淡く影を現している。舞台下手にちょっぽり枯田の畦が現れ、小さい石地蔵、施餓鬼の塔婆など立っている。