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きょうふのきせつ
叢書名著の復興1 恐怖の季節
三好 十郎
線上閱讀三好 十郎《叢書名著の復興1 恐怖の季節(きょうふのきせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 257,544 字 · 508 頁
生きたのだ。通って来た者は、みなそれぞれのキズを負っている。
われわれが戦後の文芸作品を見た時に、われわれの目が、そのキズの所産またはキズそのものとしての性格を最も強くそなえた――すくなくとも、最も強くそなえ得る条件や前提を持った作品や作家たち、つまり戦後派に最も強く注がれるのは自然であろう。それは単なる興味からだけでは無い。もっと冷厳な、もっと深い関心からだ。自分一個の経験と他の人々の数多の経験の間の普遍と特殊とを照し合せ、修正し合って、それを客観的な「人類の経験」として跡づけたいという――言わば、もう既にわれわれの本能にまでなっている近代的、科学的な欲望からのようである。そして、さらに深い所では――もちろん、無意識的に――作品や作家がそこに露呈しているキズそのものの中に、治療を求めているのである。
戦後派作家たちの作品が、それぞれ多かれ少なかれキズになっている事は事実である。われわれは、それらから多かれ少なかれ治療をも得ている筈である。にもかかわらず、治療の実感が来ない。満足しない。すくなくとも、私はそうだ。ハグラカされたような気がする。引きのばされたような感じがする。