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こせんのなぞ
古銭の謎
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《古銭の謎(こせんのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,885 字 · 26 頁
一
一
「別ぴんさん勘定だよ、……こんなに多勢居る娘さんが、一人も寄り付かないのは驚いたネ、せめて、勘定だけは取ってくれよ」
とてもいい心持そう。珍々亭のスタンド前、一番人目に付こうという場所を一人占めにして、一人の老紳士が太平楽を極めて居ります。
「ヘエ百八十五円頂戴いたします」
そういうのは、十七八の女給、
「百八十五円? それは安い、八百五十円の間違いじゃあるまいネ」
胡麻塩になった山羊髭を喰い反らした人の好さ相な顔を、女給の鼻の先へヌッと突出します。
「間違いなんかいたしません、百八十五円ン」
事面倒と見て、切口上にまくし立てる女給の前へ、かくしから掴み出した、金銀銅銭をザラリと撒いて、
「サア、この中から好きな丈け取ってくれ」
「アッ」
女給は驚いたわけ、その一と掴みの金銀銅銭というのは、悉く古銭ばかり、小判、二分金、一朱銀、天保銭から、文久銭、駒曳銭もあれば、永楽銭もあるという有様、選りわける迄もなく、今日通用する金は一枚も交っては居ません。
「アラ御冗談なすってはいけませんよ。みんな、昔のおあしばかりじゃありませんか」
相手が少々甘いと見たか、若い女給さんなかなか負けません。