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きらこうずけのたちば

吉良上野の立場

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《吉良上野の立場(きらこうずけのたちば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,369 字 · 24 頁

青空文庫

「こんな費用で、十分にもてなせると思えん」

「おききしますが、饗応費はいくらの金高と、公儀で内規でもございますか」

「何!」上野は赤くなった。

「後の人のためにもなりますから、私このたびは七百両で上げたいと思います」

「慣例を破るのか」

「慣例も時に破ってもいいと思います。後の人が喜びます」

「ばか!」

「ばかとは何です」

畠山が、

「内匠っ!」といって、叱った。

「慣例も時によります」

内匠頭は、青くなっていいつづけた。

「勝手にするがいい」吉良は拳をふるわせて、内匠をにらみつけていた。

四

藤井が去ると、

「怪しからんやつだ」と、上野は呟いた。

用人が、

「浅野から」といって、藤井の持って来た手土産を差し出した。

「それだけか」

「はい」

「外に、何にも添えてなかったか」

「添えてございません」

「彼奴め、近年手元不如意とか、諸事倹約とか、内匠と同じようなことをいっていたが、そうか」

上野は冷えたお茶を一口のんで、

「主も主なら家来も家来だ」

「何か、申しましたか」

「ばかだよ。あいつらは。揃いも揃って吝ん坊だ!」

「どういたしました」

「浅野は、表高こそ五万三千石だが、ほかに塩田が五千石ある。