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どうほう

同胞

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《同胞(どうほう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 頁

青空文庫

」

母は遠い処を見るような眼付をした。

「朝の……五時頃でしたかね、なんでもまだ明るくならないうちでした。この子は夜明に生れたから運がいいと、そうお祖父さんは仰言ったんですよ。」

そして弟は何時頃に生れたんだろう、と恒夫は考えた、どんな風に生れたんだろう……。それは丁度、鶏卵の黄身についてる小さな目、あれをじっと見るような感じだった。

彼は不意に口笛を吹き出した。元来極めて下手で、流暢に鳴ったためしがなかったけれど、気持だけは朗かに吹き鳴らしてるつもりだった。そして、誰が何と云おうと、弟を探し出してやろう、弟に逢ってやろう、という決心を固めた。

或る日、恒夫は大塚の店を探しあてた。

二階と奥とが住居になっているらしい相当な店だった。店の奥には、堆く紙類がつみ重ねてあった。右手と前面には、重に小学校用のらしい文房具が、一面に並べてあった。左手には、各種の煙草やパイプが、硝子箱の中にはいっていた。そしてその真中に、若々しい髪の結い方をした中年の女が、膝の上に小布をのせて、縫い物か何かをしていた。眉と眼との間が少しつまった、揉上の長い、肥った女だった。

恒夫はその前を何度も往き来した。