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ななしゆびものがたり
名なし指物語
線上閱讀新美 南吉《名なし指物語(ななしゆびものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N4,點詞查義。
N4 · 入門 · 新字新假名 · 10,312 字 · 21 頁
そして、それができあがったとき、親方から、ながかった奉公のおひまをいただきました。
「マタン。おまえがはじめて、わしの店へやってきたとき、わしはおまえの手を見て、指が一本かけているんでは、まあ、ろくな職人にゃなれまいと思っていたが、おまえは一生けんめいに仕事をはげんで、今じゃ、親方のわしより、よいうでになってしまった。わしはおまえを手ばなすのが、おしくてたまらない。」
親方はそういって、たくさんの金をマタンにあたえ、わかれをおしんでくれました。
マタンは、お金と木ぐつを大切に身につけて、川のふちのにぎやかな町を去ったのでありました。それは秋のすえごろのことで、はだ寒い風が東からふき、野には人のかげさえ見えず、マタンはさびしさを感じながら、けれど、心のおく深いところには喜びをわきたたせつつ、いそいそと道をたどっていきました。いくつもいくつもの、丘を通りすぎました。どの丘の上にも、四本の手をもった風車が、はてしない秋の空の下にあって、キリキリとまわっていました。そして、風車の手によってまねきよせられるように、雲は東の地平から、つづれ綿のように流れ出してきて、いずこともなく流れ去っていきました。