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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《名人地獄(めいじんじごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 頁

青空文庫

「それにしてもおかしいじゃないか、あの厳重な普請の仕方は」「ちょうど敵にでも攻められるのを、防ぐとでもいったような構えだね」「黙って黙って、ソレお通りだ」

そこへ行列がやって来た。

すると三番目の駕籠の戸が、コトンと内から開けられて、美しい女の顔が覗いた。

そそられた銀之丞の心

銀之丞は何気なくそっちを見た。

女の視線と銀之丞の視線が、偶然一つに結ばれた。と、女はどうしたものか、幽かではあるがニッと笑った。「おや」と銀之丞は思いながらも、その笑いにひき込まれて、思わず彼もニッと笑った。

と、駕籠の戸がポンと閉じ、そのまま行列は行き過ぎた。

はなれへ戻って来た銀之丞は、空想せざるを得なかった。

「悪くはないな、笑ってくれたんだ! だがいったいあの女は、おれをまえから知っていたのかしら? そんな訳はない知ってる筈はない。……とにかく非常な別嬪だった。さて、恋が初まるかな。こんな事から恋が初まる? あり得べからざる事でもない」

その時庭の飛び石を渡り、お品がはなれへ近寄って来た。色は浅黒いが丸顔で、眼は大きく情熱的で、そうして処女らしく清浄な、すべてが初々しい娘であったが、手に茶受けの盆を捧げ、にこやかに笑いながら座敷へ上がった。