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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《名人地獄(めいじんじごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 頁
「ははあさようでございますかな。いやほかならぬあなたのお言葉だ。それに違いはございますまい」
「わしはな」と客は物うそうに、「五年以前あの賊のために、ひどく煮え湯を呑ませられましてな。……いまだに怨みは忘れられませんて」
「おやおやそんな事がございましたかな。五年前の郡上様といえば、名与力として謳われたものだ。その貴郎の手に余ったといえば、いよいよもって偉い奴でござるな。……おや、堤を駕籠が行くそうな。提灯の火が飛んで行く」
「水神あたりのお客でしょうよ。この大雪に駕籠を走らせ、水神あたりへしけ込むとは、若くなければ出来ない道楽だ」
「お互い年を取りましたな。私はもうこれ五十七だ」
「私は三つ下の五十四でござる」
「あっ」と突然寮のあるじ一閑斎は声を上げた。「提灯が! 提灯が! バッサリと!」
その時墨堤の方角から、女の悲鳴が聞こえて来た。
「ははあ何か出ましたな」
――与力の職を長男に譲り、今は隠居の身分ながら、根岸肥前守、岩瀬加賀守、荒尾但馬守、筒井和泉守、四代の町奉行に歴仕して、綽名を「玻璃窓」と呼ばれたところの、郡上平八は呟いたが、急にニヤリと片笑いをすると、