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『わがはいはねこである』じょうへん
吾輩は猫である
線上閱讀夏目 漱石《吾輩は猫である(『わがはいはねこである』じょうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 頁
深入りをすれば主人自らが泥棒になるはずである。前申す通り主人は立派なる逆上家である。こう勢に乗じてぬすっとうを追い懸ける以上は、夫子自身がぬすっとうに成っても追い懸けるつもりと見えて、引き返す気色もなく垣の根元まで進んだ。今一歩で彼はぬすっとうの領分に入らなければならんと云う間際に、敵軍の中から、薄い髯を勢なく生やした将官がのこのこと出馬して来た。両人は垣を境に何か談判している。聞いて見るとこんなつまらない議論である。
「あれは本校の生徒です」
「生徒たるべきものが、何で他の邸内へ侵入するのですか」
「いやボールがつい飛んだものですから」
「なぜ断って、取りに来ないのですか」
「これから善く注意します」
「そんなら、よろしい」
竜騰虎闘の壮観があるだろうと予期した交渉はかくのごとく散文的なる談判をもって無事に迅速に結了した。主人の壮んなるはただ意気込みだけである。いざとなると、いつでもこれでおしまいだ。あたかも吾輩が虎の夢から急に猫に返ったような観がある。吾輩の小事件と云うのは即ちこれである。小事件を記述したあとには、順序として是非大事件を話さなければならん。