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のろいのダイヤモンド

呪の金剛石

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《呪の金剛石(のろいのダイヤモンド)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,393 字 · 28 頁

青空文庫

何方からも相当の手当が出て居るせいか、宿の亭主も最初の内は黙って居りましたが、夜半近くなると、さすがに堪え兼ねたものと見えて、特別入念の仏頂面を裏二階へ現わしました。

「もう、いいかげんにして貰おうじゃないか、冗談じゃない。一体何をそんなに探すんだね、あの空っ尻の毛唐が、金の茶釜でも隠して置いたというのかい」

「埃を立ててすまないが、もう少し我慢してくれ、一体ボイロフの泊って居た室というのは、お隣とこっちと、どれが本当なんだ」

埃だらけの汗だらけになった私が廊下へ顔を出すと、猶太鼻の亭主は、恐ろしい不機嫌な顔を半分ほど梯子段の上へ出して、

「どっちだっていいじゃないか、第一その室の中には、何んにもありはしないんだよ、夜っぴて叩いて居たって、鼠の糞と南京虫の卵が出て来るのが精々だろう」

「じゃ、聞くがネ、あのボイロフという西洋人は、もしかしたら、鳩の卵ほどの青い美しい石を持っては居なかったかネ」

「なんだ、あの石を探して居るんかい、そんなら早くそう言えば良いに。埃を立てたり汗を掻いたり馬鹿な面だ」

「じゃ何んかい、あの石の行方を知って居ると言うのかい」

隣りの室も大捜査の手を休めて、この廊下の立話に聴き耳を立てて居るようです。