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ぜんあくりょうめんねずみこぞう

善悪両面鼠小僧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《善悪両面鼠小僧(ぜんあくりょうめんねずみこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,231 字 · 21 頁

青空文庫

「アラヨ!」なあアんて景気がよい。

お華客廻りは陽の出ぬ中、今日でも東京の魚屋にはそう云う気風が残っている。

女房のお松は二十三四、いわゆる小股の切れ上った女、雑種ではない正味の江戸者、張があって愛嬌があってそうして頗る人使いが旨い、若衆と一緒に床を出て、自分から火を焚いて湯を沸す、下女を労わる情からである。

やがて朝陽が家根越しにカッとばかりに射して来た。

「まあ内の人はどうしたんだろう。朝寝坊にも際限があるよ、どれ行って起こしてやろう」

裏に造られた離れ座敷へ飛石伝いに行って見た。

ピッシリと雨戸が締まっている。

「もー、お起きなさいよ起きなさいよ。お日様が出たじゃありませんか」

トントントンと戸を叩いた。

「おお、お松か、やけに叩くなア。まあもう少し寝かせてくれ」

内から次郎吉の声がする。

「何の、昨夜遅かったのさ。どうも睡くて耐らねえ」

「いいえ、いけません、お起きなさいよ、魚屋の亭主が朝寝坊じゃ人前が悪いじゃありませんか。ようござんすか開けますよ」

ガラリと一枚雨戸を開けた。

「いけねえいけねえ来ちゃいけねえ!」

「おや、おかしい?」――と、その声を聞くと、お松は小首を傾けた。