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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

線上閱讀森田 草平《四十八人目(よんじゅうはちにんめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 頁

青空文庫

十一

小平太が林町の宿へ帰ってきた時は、まだ夜が明け放れたばかりであった。勘平は一人起きだして、雨戸を繰っていた。そして、小平太の顔を見ると、

「おお毛利か、帰ってきたな」と、いつものように声を懸けた。

「いや、昨夜は御心配をかけてすまなかった」

「なに、別段心配はせんがね、ただ時日が迫っているので、何かまた異変でも生じた時、君が居合せないために、後で臍を噛むようなことがあってはならぬと、ただそれだけを案じたよ」

「ありがとう、母がまた癪を起してね、まあ、これが最後だと思って、宵終ついていて看護してきたよ」

「で、別にたいしたことはないのか」

「いや、いつもの持病だ。気がかりなことはないさ」と言いながら、小平太は極りの悪そうに、こそこそ自分の居間へはいった。

同志から疑いの眼で見られるのも辛いが、それよりも、この期に及んでなおその前を繕うために、同志を欺かねばならぬということが、小平太にはいかにも心苦しかった。そうだ、これはどうしても頭領に届けでるほかはない。一刻も早く届け出でて、その御裁可を得ておく。もっとも、こんなことまで太夫の耳に入れるのは、いかがとも思われないではないが、たとい女には関係しても、小山田などと一つでない証拠を見せるためには、思いきって何もかも白状してしまうほかない。